朕(1970)夕食後、ふと香月泰男のシベリアシリーズを再見したくなった。理由は特に思い浮かばないが‥。早速1995年、横浜のそごう美術館で開催された折の「没後20年香月泰男展」を引っ張り出してきた。もうあれから15年以上経つのだ。いくつかの絵は見ていたが、160点以上におよぶ回顧展を見て、その内のシベリアシリーズの迫力に圧倒された。そのカタログにはシベリア・シリーズの全作品に作者の言葉による解説が付されている。シベリア抑留という生死の極限におかれた人間集団を経験した作者のひとつひとつの作品には、作者の言葉すらも言葉を拒絶するような圧倒的な存在感がある。どんな言葉を記しても何も云ったことにならないような、そんな絶望的な極限の体験であろう。まして私の言葉など、作品の前では無用のものであることは承知をしている。...香月泰男のシベリア・シリーズ